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2017年2月 3日 (金)

舞鶴かまぼこの原料魚(その1)  かまぼこ百科⑮

シログチは舞鶴かまぼこの高級品に使われている魚種であり、現在でも、毎日、組合のすりみ工場ですりみにして、舞鶴のかまぼこ屋さんに届けている。

グチ類はスズキ目スズキ亜目ニベ科に属する。ニベ科の魚は頭部に大きな耳石(じせき)を持っているので、よくイシモチとよばれる。

 ニベ科の魚が最も多く漁獲されているのが、黄海、東シナ海の以西底引き網漁業であった。 過去形で書いたのは、実は、近年になって以西底引き網漁業の衰退がみられ、ニベ類を漁獲する船団がほとんど姿を消してきたからである。

 しかしながら、タイをはじめとする東南アジアにも、日本のシログチとよく似た鰓のうしろに黒い斑点のあるタイワンシログチがいる。ただ、何種類かのニベ類と混獲されるために、シログチだけのすりみは生産されておらず、また、日本の以西底引きで漁獲されたものと比較すると全体的に品質が悪い。

 現在では、良質のシログチ原料は、中国の漁船で漁獲して、日本の港に揚げる鮮魚と、中国のすりみ工場でつくったシログチの冷凍すりみに限られている。 お隣の韓国では、日本における“鯛”のように、ハレの席の料理に使われる魚である。

 地元舞鶴では、少しだが獲れても、鮮魚としての価値は少ないが、たまにスーパーなどのお刺身コーナーで「クツ」という名前で販売されており、私はたまに買って食べるが、白身の淡白な味の魚である。

 ただ、地元で獲れるグチ(地元ではクツと呼ばれる)は、残念ながらかまぼこには、さほど向いておらず、以西底引きで獲れるグチよりも少し品質が劣る。 同様に瀬戸内海でとれるグチも使用するが、これも、鮮度がよくても、舞鶴産と同じで、高級かまぼこには余り向いているとはいえない肉質をしている。

 しかしながら、グチ類はしなやかさのある強いアシ(=弾力)のかまぼこをつくるためにはなくてはならない魚である。ちょうど、この食感が舞鶴かまぼこの特徴ということになる。

 舞鶴かまぼこは2段加熱(一度に蒸さず、40℃~50℃の低温で蒸してから、90℃以上の高温で蒸しあげる)の製法をとっているが、まさにこれはシログチの弾力を最もうまく引き出す為の加熱方法であり、原料魚のこだわりとあわせて舞鶴の伝統の製法となっている。

 ただ、温度加減は微妙で、55℃から60℃の温度で蒸してから、高温で蒸しあげると、まったく弾力のないかまぼこになってしまう。 わずか5℃~10℃温度を間違えただけで全く違う品質の商品になってしまうのである。

 この魚は、また、かまぼこのために生まれてきたような魚で、鮮度が少々落ちても、なかなかかまぼこのアシ(=弾力)をつくる能力が落ちないのである。

 現在のようにコールドチェーンが完備していなかった時代に、かなり遠くはなれた工場まで運んでからかまぼこにしても、そこそこのかまぼこができたらしい。

 しかしながら、鮮度が落ちると臭いがするなど、品質には悪影響を及ぼす為、現在では、グチの秘められたその能力の恩恵をうけることはない。

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